~プロローグ~


春の初め、アシナガバチが巣作りに良さそうな場所を探し始める。

その中の一匹が、とあるウバメガシの枝下に居を構えた。風雨を避けられ、目立たない。
周りは雑木林のように草木が茂っていて、餌の昆虫を狩るにも理想的であった。

夏の間に巣は順調に大きくなり、次々と働きバチも増えて行った。
このまま、雄バチも来年の女王バチも生まれ、巣立って行くはずだった8月の上旬、ハチたちにとって恐れていたことが起きた。

敵に巣が見つかってしまったのだ。
それは、肉食性のアリ、シリアゲアリであった。

ハチたちは必死で巣を守ろうとしたが、アリもまた毒を持ち仲間で襲い掛かってくる、手強い相手。
次々に卵を破られ、蛹を食べられ、腹部末端から蟻酸をかけられ、無数のアリが巣を覆い尽くしてしまえば、アシナガバチと言えど諦めるしかなかった。


そして、巣を追われたハチたちが一時的に逃げ込んだ場所。

それは、人間の家の、玄関であった。



●なんかやたら虫が訪ねてくる日

ヤッホー、茜です。

なんか、8月8日の朝、もうすぐ4歳になる娘のいちこが、「あそこにセミおる。」つって。壁を指差したもんで。

え?家ン中??

ってちょっとびっくりしていちこが指差してる壁を見たら、ほんとにセミ止まってたよね。

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掴んで外に出してあげたんだけど。

「なんで人間の、家の中に入って来たの??意味わからん!」と私がゆうと、

「バッカチンや!!自分のお家に帰りなさいってカンジ~!」といちこ。

3歳児の突然のギャル的喋り方に大笑いした、出勤前。平和やったな。


んで、朝そんなことがあったんやけど、帰ってきたらまた玄関にでっかい虫いた。
緑色で、でっかくて、身体が平べったい、いかにもでっかい声で鳴きそうな奴。

この『近所の虫の飼いかた2』って本(本屋でこの背表紙を見ただけでアドレナリンが噴出し、気づけば興奮で震える手でレジに持って行っていた)で調べてみると、ツクワムシであるらしかった。

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実はうちにはエアコンが無く、人がいる間は玄関を全開にして、業務用の大型扇風機で外の風を強制的に室内に送り込んでいる。
屋内の暑い風を入れて効果あるの?って思われるかもしれないが、
うちは田舎だし、家と家がそこそこ離れていて庭もあるし、
庭は雑草も植木も元気モリモリで水分を蒸散させまくってるし、
風通しもいいし・・・

で、灼熱地獄に突き進む現代にしては、意外と涼しいんである。


その日は夫が早く帰って来ていたので、大型扇風機はいつものごとく全力で仕事をしていた。もちろん玄関扉は全開である。


壁を這っているツクワムシを見守っていると、またしてもいちこが、

「ムシが巣をつくってる!」

と天井を指差してる。

見ると、なんと電気の傘にアシナガバチが大量に止まっているではないですか!!
その数、ざっと見ただけで30匹はいた。

今までもアシナガバチが家の中に迷い込んでは、窓から追い出したりしてた。
けど、30匹はヤヴァイ。こいつら集団になったらコワイ。しかも玄関だし。
こいつらの真下を外に出るたびに通らなきゃならないし。ハチって黒い動くものに敏感だってゆーし。
いちこいるし。

可哀相だけど、全員死んでもらうしかない。他に道はない。

夫がハチを一網打尽にするスプレーを買いに飛び出し、玄関にいたハチをすべて殺してくれた。
その後庭を調べると、ウバメガシの枝に空っぽになった彼女たちの巣が見つかった。

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巣にはびっしりとアリがたかっていて、アリに巣を奪われたハチ達が逃げ込んだ先で、人間に殺されてしまったことが解ったんだ。


でも、被害はそこで終わらなかった。

悲劇は連鎖したんだ。


●夜中、ハチに刺された。いちこがしたことと言えば、爆睡してただけ。

なんか、うちの娘、アウトドア好きでして。
アウトドアが好きってゆーか、テントが好き?なのかな??

家の中にテント張って、そこに布団入れて寝てる。
秘密基地感?
天蓋つきのベッドみたいなイメージなんだろか。


その日も、一人用の布団に母子二人でぎゅうぎゅうになって寝てた。in テント。

夫はその隣の茶の間で行き倒れてた。


1時頃、突然いちこが悲鳴を上げた。

「ムシが―!!!」
「痛い!!!」

夢見てるのかとも思ったし、カナブンかなんかがいちこの足元にいたのかなとも思ったけど、その割に様子がおかしい。

いちこの身体をさすると、確かになんかの虫がいる。

テントの中の電球をつけてみると、なんとハチである。
白目剥きそう

全て殺せておらず、生き残っていた者がいたのである。そしてあろうことかテントに潜り込み、全く意味が解らないが、寝ている幼子を刺したんである。


急いでテントからいちこを抱きかかえて逃げ出し、刺されたところを確認すると、それは手のひらの真ん中。

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右手全体が浮腫んでいるようにも見える。

ネットでハチに刺された時の対処法を確認していると、殺しても殺しても、どこからともなくハチが現れる。
この時はもう玄関は締め切っているので、もともと部屋に入っていたハチである。

その度に夫がスプレーしたり、何かで叩いたり。
全部で6匹もおったで。

いちこはすっかりハチが大嫌いなり、恐怖と怒りと痛みと眠さで、泣きながらキレまくっている。

「もうハチ大ッキライ!!!!」

と、顔中ぐしゃぐしゃになって怒っている。


幸い全身症状はなく、夫が持っていたステロイド軟こうを塗り、30分ぐらい経つと

「なおった。もう痛くない。寝る。」

と言い出し、またテントの中で安らかに眠った。


夫もハチに刺された経験の持ち主だが、彼によると“突然5寸釘を打ち込まれたような痛さ”だと言う。
3歳でそんな痛みを味わったいちこ・・・(涙)


次の日念のために夫が病院へ連れて行った。

・ハチ刺し症は2回目がより危ないので、もう二度と刺されないように
(そんなことできるのか・・・!?)

・アウトドアに行くときも虫よけスプレーを塗るように

と、医者から指示を受けたそう。



んで、意外だったのが、いちこ、ハチにすんごい嫌な想いさせられたから、ハチの事めっちゃ怖がるようになるかと思ってたんですけど、案外そうでもないなってゆう。

「ハチ達の巣がアリに食べられたから逃げてきてたんやで、ハチ達もパニックになってたのかな」ってゆう事実に納得したのか、同情したからか。
親がハチ見てもうろたえたり怖がったりしないで、冷静に対処してるからか。
(いちこにはハチを殺してくれる父ちゃんがすんごくカッコよく見えるらしい

未だに(1か月後の現在)「カメムシとぉ、ハエとカぁが大っ嫌い!」とか言ってて、ハチ入ってないやん。
カメムシがどんなかよく知らんやん??ってゆう。


私はと言えば、

「自分から攻撃しなければ、ハチは襲ってこない」

ってゆーナウシカ的信念が愛娘の被害でもって粉々に打ち砕かれ、ちょっとショックでいっぱい。
今まで、「好きな虫は?」って聞かれたら「ハチとアリと蜘蛛」って言いたいぐらい、ハチのことリスペクトしてたからぁ。


ちょうどその後、図書館に行ったらこんな本見つけた。


タイムリーだったから借りてみた。

2回目にハチに刺されたときに重症化する人は、1度目でもかなり腫れるとか、蕁麻疹が出るとか、結構全身症状が出てる人が多いって書いてあって、
いちこはそうでもなかったから、ちょっと安心した。


けど、これからも日常で気をつけることと言えば、

・ハチが近くにいるときは騒がない

・静かに遠ざかる

なんだよな。
ハチって急に現れて、そんときにハチを殺すスプレーとか、虫よけスプレーとかまず持ってないし。

ほんで、アウトドアするときは長袖&長ズボン&帽子に、プラス虫よけスプレーとポイズンリムーバー(ハチに刺された時に毒を吸い出す器具)を持って行くってことやな。


こんな感じ―

おわり。