今の職場(製造業)に来たのは2018年1月。
今は2019年9月だから、働き出して2年未満ということになる。
派遣は三年区切りなので、あと一年半ぐらい残ってはいる。


「引き抜かれた」というタイトルだけ見たら、まるで私が人よりも仕事ができて頭もよく、コミュニケーション能力にも長けている印象を持つかもしれないが、実際は真逆である。

課長にはいつも「お前はセンスがない」「とろい」と言われてるし、
何カ月もかけて教えてもらった“色合わせ”とゆー技を、終に私は覚えることができなかった。
ほんでついに色合わせから外されたら、私の後に色合わせを習ったMさんは3日で覚えた。
Mさんは工場中の全工員から愛されているため、“●●商事の癒し”“●●商事の女神”とその名を馳せているが(私から)、さらに魔法使いでもあることが判ったのだった。

それだけならよかったのだが、私が物覚えがニワトリ並みに悪かったため、辛抱強く色合わせを教えてくれていた上司からも嫌われる始末であった。


そんな私が引き抜かれたのは、偶然とゴネ得以外の何物でもないと思う。ただ、自分ではごねた意識は全くない。

なので、この記事を読んだところで、誰かの参考になるとも思えないが、日本の何処かにこういう人間がいること、それと派遣先と派遣元の関係などを、知識として知っていてもいいかもしれない。


●直接雇用への道のり~①課長からの打診

一年が過ぎたころ、女神が雑談を装ってこんなことを聞いてきた。

女神1
女神「道草さんは派遣の契約が切れたらその後はどうするの?」

私「ここの工場が私を雇ってくれたらずっと来たいですけど・・・きっとそれはないんで、今度は本社工場に派遣で行けたらいいなとも思ってます。」

私のいる派遣先は、いくつもの関連会社が広い敷地内に軒を連ねている。
私は自分が手掛けている商品が大好きだったので、本社工場にでも移って別の角度からその商品に携わりたいと思っていた。そうすれば、もっと商品のことがよく解るようになるからだ。

女神1
女神「パートになればいいのに。でも給料安いか(笑)」

そう言うMさん。Mさんも元はパートだったのだが、あまりの仕事っぷりと愛されっぷりで2年で特別嘱託になった、彗星のごときスピード出世を果たした人物である。やはり大魔法使いか。

ちなみに特別嘱託とは、退職金が出ないものの、給料とボーナスは社員と同じ待遇であるそうな。


そんな会話をしたその日の午後か次の日。

私が仕事をしていると、課長がやってきた。

道草さんも今日は

課「道草さんパートは嫌か?もしずっとここにいたいなら工場長に話してやるぞ。
 まあ時給は下がるけど。(800円である)
 でも派遣だったらいずれ辞めないといけないだろ?せっかく仕事覚えたし、パートになったらボーナスも出るぜ。」

私「それは二年後の話なんですよね?」

課「今だけど?」


ありがたいお話ではあるものの、私は悩んだ。
何しろ、時給が800円である。私はその年の4月に昇給したばかりだった。50円。時給950円で働いていたのだ。
ちなみに950円分の働きをしていたとは、自分では思えない。

それに本社工場に行きたい気持ちも強かった。
希望する部署に入れるかはわからなくても、商品のことをもっと違う角度から観たかった。


職場の飲み仲間に、派遣から正社員になった人がいるのでいくつか質問してみた。
パートから嘱託になるまでどれぐらいの期間だったか、
パートの時給がどこまで上がったかなど、結構突っこんだことを聞くつもりだった。

すると、社長に見初められた彼はパート歴一年で嘱託に、そして特嘱を経ず一気に社員になったことがわかった。

「まあ、俺そんぐらい仕事できたから。」

女神以上の飛躍を成し遂げた彼の鼻は、レッド公よりも高かった。

(レッド公)↓
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つまり、あんまり参考にならなかったんだ。



その後もいろいろ悩んだ結果、私はパートになることに決めた。
パートのボーナスが、社員の半分あることが判ったからだ。その年の社員のボーナスは平均で40万あった。
時給が下がってもボーナスで大体同じぐらいにはなる、しかもいずれ時給は上がるだろうから、数年後年収は今よりも増えると踏んだのだ。


お話をいただいてから2週間ぐらい経って、私は課長にパートになりたい旨を伝えた。

そしてもう一つ、考えていることがあった。

私のように派遣で入ってきた人間は、

パート→嘱託→特嘱→社員

という流れを辿る。
でも、嘱託になるには、正規の時間働かなければならない。
実は私は、保育所の送迎に合わせて時短勤務で働いていたのだ。みんなより始業が30分遅かったのである。

正規の時間に間に合うには、朝20分早く出なければならなくなる。
解ると思うが、朝の時間を20分早めるって、めっちゃめちゃチャレンジである。
今でさえギリギリになっている。それを20分も前倒しするって!

パートも自分にとって都合のいい時間で働くことができるが、
でも、どうせパートになるなら嘱託を狙った方がいいに決まっている。

私は一か月間、正規の時間に来れるか試してみることにした。
もし来れるようならパートで、無理なら派遣のままでいようと思った。そう課長に報告した。


●直接雇用への道のり~②派遣元の所長に報告


たまたま、派遣会社の所長が工場に来ているところを見つけた。

私は課長からパートのお話をいただいたこと、
どうせなら嘱託も目指したいので正規の時間に来れるか試したいこと、
でも私が勝手に早く来ているだけで、給料には影響しないことを伝えた。

所長
所「早く来るのは全然大丈夫ですヨ。でもその時間には働かないでくださいね。」

所長は爽やかにそう言ってくれた。

ただ、パートの話については、

所長


所長
所「本来そういう話は会社同士でするものなので・・・
 ●●商事さんからは何もきいていません・・・。

 それに無期雇用という形もできるんですが・・・。

 よくあるのが、現場同士で勝手に話をするパターンなんですよ。だから課長さんから言われたことはあんまり真に受けないように。」

ん???

なんか風向きがチガウ・・・。

所長によると、

派遣先の会社Aからこの派遣社員を直接雇用したいという打診がある
派遣会社がその派遣社員にA社の雇用条件を提示
派遣社員がその条件でよければA社に移籍

という流れが正しいものだそうである。


でも、まずその派遣社員の意向を派遣元が確かめるのは理に適ってる気もする。

私は不思議に思いながらも、早起きの道を突き進んだ。


●直接雇用への道のり~③この話はなかったことに


1カ月試してみて、なんとか始業時間に間に合いそうだとわかった。
私は課長にパートのお話を進めてくださいとお願いした。

次の日、課長に呼び出された。

油売り

油売り

油売り
課「管理に言ってみたけどな…いい顔せんくってな・・・。
 契約の途中で引き抜きするのは、契約違反になるからって・・・。
 他の関連会社にも派遣社員たくさん来てるから、契約反故で派遣会社を怒らせたら、全員引き上げられんとも限らんからな・・・
 もしそうならえらいことになるからな。

 事務員でもうすぐ派遣の契約が切れる人がいて、その人はパートで雇うつもりだから道草さんもついでにと思ったけどダメやったわ。

 ベテランの××さん(同じ部署で働いている人)ももうすぐ辞めるし、本気で人手が足りないから、会社にとっても道草さんにとっても良かれと思ったけど・・・

 期待させて悪かったな。」

私「じゃあ二年後に契約が切れたら、私がパートに応募するのはどうですか?」

課「ただその頃パートの口があるかどうか、俺には保証できん。」


そ、そうですか・・・。

その時、私は所長に言われたことを思い出した。
一応、正規の手続きの流れはあることを。
もしかして、所長が「こんな話を小耳に挟んだんですけど、現場内で勝手に話決めないでください」って、工場長や管理職に釘を刺したのかもしれない。


それにしても、せっかく頑張って普通の時間に来始めたのに、今更もとに戻るわけにはいかない。「あの人来ようと思えば来れるのに」って、陰口を言われるに決まってる。
他の小さい子供を抱えた工員は、みんな正規の時間にちゃんと来てるのだ。


この話は、ここで無かったことになった。





かに思われた。


●直接雇用への道のり~④工場長、動き出す


ある日の昼休み、また工場を訪ねて来ていた所長に出くわした。

所「P工場長が、道草さんが辞めたがっているっておっしゃってたんですが。」

私「???」

所「うちを辞めて●●商事さんの方に行きたいと。」

ああ、そっちか。
もう派遣でもパートでもどっちでもいいから、ずっとここで働きたいと思ってます。作ってるものが大好きだし^^

私「ハイ、できればパートになりたいですね・・・。」

所「うちの方からは何もできないので・・・。
 でもP工場長に、私からも道草さんがパートになりたがっていると伝えておきますよ。
 この話はもう会社同士の話になるので、道草さんはしないでください。」


ハイ、ありがとうございます、
(でもそれって、なんか意味あるんでしょうか????)

「道草さんパートになりたがってますよー」「そうなんですよ~なりたがってますよ~」的な会話でしかないんじゃ???

まるで私がごねてるみたいかな???

とか思いながら、発想力に乏しい私はそれ以上考えるのをやめた。


そっからまた数日して、課長が言った。

課「Pが道草さんを雇用できんか、ナントカ会の議題に出すって言ってたぞ。そこで承認が得られたら、ドウチャラ委員会で正式に決まるらしい。」


課長の顔を立ててのことか、P工場長がお人よしなのかはわからないが、私の知らないところで話が動き始めたのか、停滞してるのか。
その後ずっと音沙汰無かったが、ある日、所長がゲートの前で待っていた。

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所長は雇用条件が書かれた紙を提示してきた。
時給はやっぱり800円であった。(3回目)

諸手を挙げて賛成という訳ではないが、納得していたので、サインをした。


●直接雇用への道のり~⑤面接


職場に新たに履歴書を提出すると、仕事中に呼び出され突然面接が始まった。
小会議室に入る前に廊下の姿見でチラ見した私の姿は、赤ら顔がテッカテカで、縮毛矯正している髪の毛も天パが生え際で自己主張を始めていて、ボッサボサであった。そりゃもう本体の私自身よりも強い自己アピールであった。


目の前に座っているのは今回尽力してくれたP工場長と、人事部長の二人だった。

面接

いろいろと必要な書類を説明され、
さらに給料のことや出世?の流れも説明された。

二年間のうちに3回査定があり、係長・課長からA判定以上(SかA)が連続でつけば、嘱託になれる資格がもらえるらしい。

あと二年っつったら私は40歳で、ここでは社員になれるのは40歳まで、だから私は無理だとやんわりと言われた。


人事部長はにこやかに話してくれたが、普段優しそうな面持ちの工場長は難しい顔をしていた。

履歴書の写真がうまく撮れていなかったからだろうか?私は自称“証明写真の伝道師”と名高く、3倍増しの写りの良さで写真に納まってきた。しかし、今回は失敗した。だってメガネ外したから前髪がボサッてなった瞬間フラッシュg

ハッ!

それか、商品への愛を書き連ねたアピール文にドン引きされたのか!?
心なしか、二人ともちらちら履歴書に視線を送っている気がする。それも困惑の目つきだ。

私は履歴書の“職場に希望すること”の欄に、「×××を作るラインを希望します」と書いた。×××とは、私が普段手掛けている商品だ。私がぞっこん入れ込んでいる商品でもある。

だがどうだ、二人は
「道草さんももう2年目なんだから、他の商品もできるようならないとね」
なんて言っている!

「二年目だからもう中堅だから」

まだ新人のつもりでした!!!

もしや、工場長の心は「変な奴引いてしもーた」とゆー後悔でいっぱいなのでは!?!?


もはや私の心の方が心配でいっぱいであった。


人事「今回道草さんはスムーズに派遣からうちに変われましたけど、皆がみんなパートになれるわけじゃないので。
いろんな契約の人がいるので、このことは言いふらさないように。」

●●商事にとっても、今回のことは冒険だったようである。
なぜ、私なんかのために危ない橋を渡ってくれたのだろう。どんぐらいの金額かはわからないけど、派遣会社に結構なお金を払って買い取ってくれているのである。



こうして滞りなく面接は終わり、9月半ばからパートに切り替わる。
嬉しさとか、喜びとかは、実はあんまりない。
期待されて親切にされた分、その期待以上の頑張りを見せないと失望される。失望は“嫌い”に変わりやすい。

ハッキリ言って、私の後に入ってきた派遣社員の方が、若いし仕事もできるし、頭もいい。おまけに美人だし、髪も艶々している。エンジェルリングとかある。
「なんで○○さんじゃなくて道草さんなんだよ・・・」とゆー陰口が今から聞こえてきそうである。

だが、こんなことを言っていては、話を振ってくれた課長や、尽力してくれた工場長に失礼極まりない。
それに、この会社の商品を私ほど愛している従業員はいない。
本社工場にはいるかもしれないけど、私がいる工場にはいない。絶対にいない。

だからみんなをがっかりさせないように、
ほんで査定でAを3回連続でとって、最短で嘱託になってやる。



おわりよ